わたしたちの快適で便利な暮らしは、数えきれないほどの製品に囲まれて成り立っています。こうした製品を作る工場の煙や自動車などの乗り物の排出ガスからは、有害な物質が発生します。これらをきちんと処理をしないと、空気や土、水が化学物質で汚され、健康や生活環境に影響をおよぼす「公害」となってしまいます。ここでは、公害の原因や影響について学んだ上で、わたしたちがどういったことに気を付ければ良いのか、考えてみましょう。
1950年代以降、工場で多くの物が作られ生活が豊かに快適になる一方で、さまざまな公害が問題になりました。公害とは、工場でものを作るなど、人間のいろいろな活動によって空気や水、土が汚れてしまい、健康や生活環境に被害が起こることです。代表的な公害(典型7公害)には、大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、騒音、振動、地盤沈下、悪臭があります。ばい煙(燃料などを燃やしたときに出るすすや有害物質)や排水、地下水のくみ上げなどによってこれらの公害が起きたのです。そこで、さまざまな法律や条例が作られ、工場などの煙の排出が取り締まられるようになりました。こうした取組の積み重ねで、公害は改善されてきました。
工場や自動車などから出る化学物質によって、空気が汚れてしまうことを大気汚染といいます。東京では工場からのばい煙や自動車の
一方で、現在でも夏には光化学スモッグ(※2)が発生し、光化学スモッグ注意報も毎年発令されており、国の環境基準を達成できていません。
※1 2.5マイクロメートル以下のとても小さな粒子(細かいつぶ)状の汚染物質です。とても小さいため、肺の奥深くまで入りやすく、健康に悪い影響を与えます。
※2 光化学オキシダントという有害物質が大気中にたまり、白いモヤがかかったようになること。目がチカチカしたり、のどが痛くなったりするなど健康に悪い影響が出るほか、植物にも害を与えます。光化学オキシダントは、自動車の
土壌汚染とは、有害物質が土壌(土)にたまることです。それが飛び散って、直接口に入ったり、有害物質が溶け込んだ地下水を飲んだりすることで健康に悪影響
が起こります。 土壌汚染と地下水の汚染は、どちらも影響が長い期間に及ぶため、注意が必要です。東京都では、1970年代前半に江東区と江戸川区の化学工場跡地での土壌汚染が明らかになり、市街地の土壌汚染が問題となりました。現在も各地で土壌汚染が見つかっており、土壌汚染による健康被害を防ぐための対策や、新たな土壌汚染を起こさないようにすることが大切です。
東京には多摩川や隅田川など大小約120の川が流れています。これらの川の水質は高度経済成長期に悪化しましたが、工場への規制や下水道の普及が進んだことで、大幅に改善されてきました。一方で、東京都内湾(※1)の水質は、1980年頃までは年々改善されていましたが、その後は、ほぼ横ばいとなっています。また、夏を中心に赤潮(※2)の原因となる植物プランクトンが異常に増え、水質が悪化するなど、引き続き対策が必要な課題が残っています。
※1 東京都内湾 東京湾のうち、多摩川の河口から旧江戸川の河口までの部分
※2 水中の微細な生物が異常に増えることで、水の色が著しく変わってしまうことです。水の色は原因となるプランクトンによって異なりますが、赤褐色、茶褐色などの色になります。
※BOD(生物化学的酸素要求量)は河川の汚れの度合いを示す主な指標。この数値が大きいほど水質が悪化していることを示す。
※COD(化学的酸素要求量)は海域や湖沼の汚れの度合いを示す主な指標。この数値が大きいほど水質が悪化していることを示す。
自動車の排出ガスを減らすために、電車やバスなどの乗り物を利用しましょう。乗用車では、電気自動車やプラグインハイブリッド自動車などの環境にやさしい車を選んだり、運転する時には環境にやさしいエコドライブをしたりしましょう。また、多少の距離は、できるだけ歩いたり、自転車を利用したりするように心がけましょう。
エコドライブって何?
「環境にやさしい自動車の運転」のこと。「ふんわりアクセル「eスタート」」、「加減速の少ない運転」など、10のポイントを心がけて運転することで、自動車から出る二酸化炭素等を含めた大気汚染物質を少なくすることができます。大気汚染対策に加え、地球温暖化対策にもなります。
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食器や調理器具を洗う時は、油汚れ以外なら温水で十分です。油汚れはいらなくなったシャツなどを切った布きれで拭き取ります。よほどひどい汚れ以外は余分な洗剤を使わなくてもきれいに洗えます。
てんぷら油を捨てる時は、牛乳パックに新聞紙をつめて染みこませたり、市販油凝固剤で固めて燃えるゴミとして捨てましょう。また、使用済みてんぷら油をバイオ燃料として再利用するために、回収してくれる自治体もあります。積極的に活用しましょう。
光化学スモッグを発生させる光化学オキシダントの原因のひとつは、揮発性有機化合物(VOC)という汚染物質です。このVOCは、自動車の
光化学スモッグ注意報が発令されたら、外での運動は控え、できるだけ建物の中に入りましょう。建物の中にいる場合でも風向きに注意して、窓を閉めるなどしましょう。特に、ぜんそくのある人や子供、お年寄り、体の弱い人は影響が大きいので、注意が必要です。